辺野古新基地建設をめぐる米国での動き「報告」③ ~ ジュゴン訴訟とINCNによるジュゴンの評価

 ③<ジュゴン訴訟とINCNによるジュゴンの評価>

 2003年より紆余曲折を経ながら現在まで続く米国ジュゴン訴訟は、この2月3日に第9巡回訴訟裁判において公開審理(日本の裁判での結審に当たる)を迎える。

 2018年8月の連邦地裁の判決を不服とした原告は、今回の控訴審で以下のことを求めている。1)辺野古新基地建設によるジュゴンへの影響について、国防総省が地域住民や環境団体などと協議を行わなかったことは、米国家歴史保存法に違反していると判断すること。2)新基地によるジュゴンへの「悪影響はない」とする国防総省の「報告書の結論も違反していると判断すること。3」国防省所の「報告書」を無効とすること。4)原告が要求した工事の差し止めについて連邦地裁に考慮するように差し戻すこと。裁判の枠組み上、控訴審は2014年4月までの国防総省の取り組みをめぐって争われている。しかし工事開始からすでに6年近く経過しており、今回の公開審理において工事開始後のジュゴンへの影響について議論がなされるのかも注目される。

<ジュゴン裁判米国弁護団の皆さん 2017、12、2>

 ジュゴン訴訟自体については、私たち市民は基本的には見守ることしかできない。ただ、長い間裁判を闘ってきた原告とEarth Justice の弁護士に感謝と労いの意を示すことは大切である。

 今後ジュゴン訴訟から派生した形で展開してきた米国連邦政府機関(海洋哺乳類委員会と国家歴史保存諮問委員会)への市民からの働きかけがさらに重要になる。その際、昨年12月に国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにおける、沖縄のジュゴンが独自の個体群(南西諸島地域)として分類し、金絶滅との評価が重要な意義を持つことになる。これらの取り組みに対しての支援をお願いしたい。

<2017年12月2日 ジュゴン裁判報告会から>

Okinawa Environmental Justice Project
吉川秀樹 

2020年2月5日リンクURL

辺野古新基地建設をめぐる米国での動き「報告」② ~ Hope Spot 希望の海に認定

②<Hope Spot / 希望の海>

 去った年10月27日、米国環境NGOのミッションブルーが、辺野古・大浦湾一帯をホープスポット(Hope Spot・希望の海)に認定した。世界各地で100ヵ所以上が認定されているが、日本では初となる。対象範囲は辺野古・大浦湾を中心にした名護市天仁屋から宜野座村松田までの44,5平方キロメートルの海域である。

<↓辺野古の海のサンゴと熱帯魚>

 今回の認定は辺野古大浦湾一帯の生物多様性や地形の豊かさ、その豊かな環境で育まれてきた文化や暮らし、そしてその豊かな環境を基地建設から守ろうとする多くの人々の取り組みが世界的に認められたことを意味する。

 ちなみに、米国最大/世界2位で日本の国土面積の4倍もあるハワイ州のパパハナウモクケアケア海洋保護区には、7000種の海洋生物が生息しているが、わずか約20平方キロの㍍の辺野古・大浦湾には、260種の絶滅危惧種を含む5300種の海洋生物が生息している。(辺野古・大浦湾が、いかに世界的にも稀有な生物多様性の豊かな海かということがわかる)

 さらにホープスポットのネットワークを生かしたエコツーリズムの可能性も注目される。例えば、ホープスポットである米国カルフォルニア集のモントレー湾やオーストラリアのモートン湾は、エコツーリズムにより地域の環境保護と経済活動の両立を図り成功している地域である。辺野古・大浦湾一帯のホープスポットにおいても、それらの地域から学び、地域発展の取り組みが行なえる。

 ホープスポットの動きに関して私たちがまずできることは、家族、友人、知人に声をかけて辺野古・大浦湾一帯のホープスポットに実際に足を運んでみること、楽しんでもらうことである。そしてホープスポットの署名に協力することである。(つづく)

 <琉球新報 2019年10月>

2020年2月4日リンクURL

辺野古新基地建設をめぐる米国での動き ① ~ 2020年度米国防権限法

 2月1日(土)の辺野古大行動日の集会の中で、環境専門家の吉川秀樹さんが行った「辺野古新基地建設をめぐる米国での動き(報告)」は、とても興味深い内容だった。
約束通り、吉川さんの話を文章化した資料(当日集会で配布された)の全文を、三回に分けて紹介する。

「辺野古新基地建設をめぐる米国での動き(報告)」 

<↓吉川秀樹氏:2月1日 辺野古の集会にて>

 市民社会による粘り強く続く現場での座り込みや抗議行動、軟弱地盤や環境破壊の問題露見、県や国会/県議会議員の取り組み、そして辺野古反対の県内外の声は、辺野古新基地反対が計画通りには進んでいないことを日本政府に認めさせた。仮に県知事が計画変更を認めたとしても、完成にはその時点から12年以上が必要で、2030年代と言われている。日本政府は「辺野古が唯一」と米国政府に「確認」を続けるが、辺野古新基地建設が、より「問題化」していることは明らかだ。

 この事実を顕著に表しているのが(皮肉)にも、元在沖縄米軍海兵隊外交政策部次長のロバート・エルドリッジによるThe Japan Time (2020年1月17 日)への寄稿文だ。エルドリッジ氏は、辺野古に固執する12の理由を、皮肉を交えてあげながら「私が海兵隊に関わってきた20年間で辺野古がgood ideaとする士官/将校に出会ったことはない。「この問題が日米2国間の関係と沖縄と本土の関係を蝕んでいき(日本政府の報告書が提出された後、米側の担当者は日本政府の無能さを非難した)、最も損失をこうむるのは日米両国の国民/納税者だ。」と述べている。

 辺野古基地建設の強行が、国防総省/米国にとっても(よって日本政府にとっても)問題となることをまず私たちが認識し、国内外に伝えていくことが大切だ。以下、米国での最近の動きを3つ紹介し、それらの動きと私たちがどのように連動できるかを提案する。

<2020年度米国防権限法

 去る12月20日に成立した「2020年度国防権限法」には、辺野古新基地建設に関する1260K条項と1255条項が盛り込まれた。

 1260K条項は、成立後「180日以内に、国防総省長官は、連邦議会の国防衛(軍事)委員会に対して、沖縄、グアム、ハワイ、オーストラリア、そしてその他の地域における米国海兵隊員の分散配置計画の実施状況について報告書を提出すること」と義務づけている。特に分散配置の実施を制約・制限する「政治、環境、その他の要因」を示すことが求められていることは注目される。

 1255条項では「普天間代替施設に関連する日本政府の貢献」についての報告を、米会計検査院の院長が連邦議会の関連委員会に行うことが求められている。同法成立の過程において、辺野古新基地建設関連の条項は一度削除されたが、日米の市民社会のメンバーや、県知事や国会/県議会議員の働きかけにより再び盛り込まれたことは重要である。

 勿論、日本政府は「基地建設は順調に進んでいる」「政治的にも環境的にも問題はない」「辺野古新基地建設で日本政府は貢献している」という主張と情報を米国政府にしていくであろう。しかしこれは同時に、私たちから米国政府、連邦議会に対して「民意は基地建設NOだ」「基地建設は不可能」「建設強行は米国の立場を悪くする」という情報と主張を提供する機会にもなり得ることを意味している。また、普天間基地のPFAS、騒音、安全性の問題を訴え、普天間の早期返還を訴える機会であることも意味している。

 市民社会が自ら動くことは勿論、県や国会/県議会議員にもこの機会を生かしてもらうことが必要だ。(つづく)

2020年2月4日リンクURL