昨日紹介した渡嘉敷島ツアーは、日曜日だったこともあり、いつも利用させてもらっているいくつかのレストランや食堂がお休みで、他に適当な食事処が見つけられず、皆さんにはお弁当を持ってきてもらいました。
午前中のコースを終えてトカシクビーチの前にある展望台の下で、それぞれ持ってきた弁当を広げ、自己紹介をしあいながらお昼を頂きました。大自然のなかで潮風に吹かれながらいただくお弁当の味は、格別です。
<トカシクビーチ 2019年7月撮影>
食事が終わって、皆さんが水泳や砂浜の散策を楽しんでいる間、ガイド役の私は荷物番をしながら、しばしの休息時間。喉を潤そうとリュクを開けたら、白湯を詰めて持ってきたはずの水筒がありません。入れ忘れたようです。
財布からありったけの小銭をつかみ、自販機を探しましたが、見渡せる範囲にはありません。「まぁ、環境の面からはいいことだ」と納得しながら、それにしても困りました。喉がカラカラです。
ビーチの駐車場にキッチンカーを見つけたものの、水は売っていないとのこと。仕方なく「コーヒーはおいくらですか?」と問えば、なんと500円という。「高ッ!」那覇の高級喫茶店並みです。手に握っていた小銭を数えたら220円しかありません。「すみません。お金が足りませんので…」と引き返えそうとしたそのとき、「足りない分は僕が出しますから、コーヒー差し上げて下さい」と声がかかりました。キッチンカーの前にしつらえられたテーブル席で、優雅にコーヒーを飲んでいた観光客らしい若い男性です。
私は驚いて「いえ、とんでもありません」とお断りしたが、「どうぞ、ご遠慮なく!」と何度も勧めるので、「では、220円分だけ下さい」と言うと、今度はキッチンカーのオーナー(女性)が「220円でいいですよ」と笑いつつ、コーヒーを入れてくれました。
コーヒーができるのを待ちながら「県外からいらしたのですか?」と訊ねると、その若者は、「そうですが、いまは阿波連(隣の集落)でダイビングショップをやっています」と意外な返事。私も、「この島の出身で、那覇に住んでいるが、今日はツアーのガイドで来ている」と自己紹介しました。
いつの間にかパートナーらしい女性も加わって、「この島にガイドさんがついて案内するような場所があるんですか?」と怪訝そうに聞いてきたので、沖縄戦のときこの島で起った事、たくさんの戦争遺跡があり、平和学習のため多くの人たちが島を訪れていることなどを、ここぞとばかり話したことは、言うまでもありません。そんな私の話を聞いて、彼らは「私たちも行ってみます」と言ってくれた。
彼はきっと、私のことを「水が飲めなくて困っている観光客」と思って、助けようとしたのではないしょうか。もともとの島人ではなくても、いまは島の一員としての矜恃を持ち外来者に接する彼に、島に対する愛情を感じて、島人の私は、とても嬉しくなりました。私がもし観光客だったら、きっと「もう一度この島に来たい」と思ったことでしょう。
思わず胸が熱くなったのは、なみなみと注がれた暖かいコーヒーのせいだけではなかったと思います。