宮城秋乃さん(チョウ類研究者) 強制捜査 ➁ ~ 米軍のゴミ捨て場にされた世界遺産の森

 今年、世界自然遺産に登録されたやんばるの森は、米軍がジャングル戦を想定した戦闘訓練をする「北部訓練場」だった。残る部分への新たな6つのヘリパッド建設を条件に、2016年その過半が返還された。

 宮城秋乃さんは、希少種の蝶・リユウキュウウラボシシジミの詳細な生態を記録したチョウ類研究者である。世界的にも稀有な生物多様性に富むやんばるの森は、宮城さんにとってかけがえのない研究フィールドだ。返還地が地権者に引き渡された直後から北部訓練場跡地に入った。そこで目にしたのは、散乱する米軍廃棄物のヤマだった。2000発以上の不発の銃弾空包、手榴弾、野戦食の袋、未使用の訓練用砲弾、放射能物質・コバルト60を含む電子部品もあった。

<写真➁提供:宮城秋乃さん>

 今回の返還地だけでなく、約30年前に返還された場所からもたくさんの米軍廃棄物が見つかった。そこでは地中に埋められたPCBやDDTが、土壌を汚染していることも分かった。これらの有害物は森の生態系に影響を及ぼし、生きものたちの命を脅かす。不発弾を見つけるたびに警察に通報し、米軍廃棄物を米軍や防衛局に回収するよう訴えた。それを地元紙が取り上げてきた。「それまでは、合法的に訴え、抗議してきた。それでも米軍も防衛局(国)も、県警もまともに取り合ってくれなかった。ついに堪忍袋の緒が切れて、4月7日、廃棄物を袋から出して、北部訓練場メインゲートにばら撒いた」のだった。

<写真①:亜熱帯の気候に育まれた生物多様性豊かなやんばるの森>

<写真②提供宮城秋乃さん:上空で訓練する米軍のヘリなどから見えるように米軍廃棄物で描いたSOSは、森の生き物たちの悲鳴である>

<写真③:2017年の夏、宮城秋乃さんの案内でやんばるの森を散策した。立ち枯れた大木の幹。たくさんの生き物たちの住処となり、やがて朽ちて土に還る。自然の営みに何一つ無駄がないことを、宮城さんは気づかせてくれた。>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年10月11日リンクURL