南部地域からの辺野古埋め立て土砂採掘始まる?

 今日(10日)は、高知県からの友人とそのご家族を案内して南部戦跡を訪ねた。

 県立平和資料館を観た後、「沖縄の塔」とも言うべき「魂魄の塔」に立ち寄ることにした。友人は、高知県の労働運動を率いるリーダーの立場にあり、毎年5・15平和行進に、仲間を引き連れて沖縄においでになる方だが、魂魄の塔には行ったことがないというので、ぜひにと私がお誘いしたのだ。

 毎年6月23日の慰霊の日に、「魂魄の塔」横の広場で行われる市民グループの平和集会に参加しているせいか、私の中の「魂魄の塔」は、たくさんのお供え物や花束に囲まれ、人々が平和の祈りを捧げる線香の煙に包まれた、どこか華やかでさえあるイメージだった。しかし、今日の「魂魄の塔」は凛として静まりかえっている。その素朴な佇まいこそ本来の姿なのだと気がついた。

 しかし、ここへ来る途中気になる風景に遭遇した。国道331を外れて「魂魄の塔」に向かうと、目指す方向の緑の一部がブルドーザーで切り崩され、赤土の山肌をさらしている。

 その土砂を運んでいるらしいダンプの列が、対向車線を通り抜けていったのを見て、辺野古の工事用ゲートから基地の中に入って行くダンプの放列を思い出してしまい、ぞっと背筋が寒くなった。

 魂魄の塔にお参りした後、近くで草刈り作業をしている男性に聞いてみた。「近くで山を切り開いているようだけど何か建物ができるんでしょうか?」と。「辺野古だよ!」と即座に返事が返ってきた。不吉な予感が的中して思わず「エ~ッ!」と大きな声を出してしまった。

 その方が続けて言うには「この間遺骨が出てきたんだよ、そこから」。「そんな土で辺野古を埋めたら、ダメですよね」と私。「罰が当たるよ」と悲しそうに顔をしかめた。聞けばその男性は、平和公園の維持管理がお仕事だという。「魂魄の塔」の周辺は「京都の塔」広島の塔」「大分の塔」など十数の各県慰霊塔が立ち並ぶ一帯である。

 国は、辺野古の埋め立て土砂を、四国や九州など県外から運ぶ予定だったが、沖縄県の土砂条例によって県外からの搬入が難しくなったため、このたびの設計変更申請で「沖縄県内各地から搬出する」ことを明らかにしている。その採掘量の大半が、沖縄戦の激戦地となり、多くの戦死者の遺骨がいまだ収集されていない南部地域となっているため、「戦没者の遺骨が混じった土砂で辺野古を埋めるのか!」と、批判が沸き起こっているところだ。

 まさか設計変更申請の審査結果も出ないうちに、土砂採掘が始まるだろうか?その男性の憶測にすぎないのではないか?と思いたい。しかし、今の日本政府ならやりかねないことでもある。確かめねばならない。

 かなり広範囲に、緑が切り崩され土砂が掘り起こされている。写真の左手数十メートルのところに「魂魄の塔」はじめ、各県慰霊碑が立ち並ぶ一帯がある。

<追記>

 11日に、辺野古で平和市民連絡会の北上田毅さんにお会いしたので、上記の件についてどう思われるか、ご意見を伺った。

 「辺野古の埋立て土砂の採掘である可能性は十分にある」という。「ただ、設計変更申請の許可が出るまでは、辺野古への搬出はできないと思う。いま同じような状況報告が多くある。県内各地で何に使われるのかわからない土砂が積み上げられている所があっちこっちにあり、いつでも辺野古へ運び出せる準備とみることもできる。

国は琉球セメント安和鉱山から、辺野古を埋め立てる土砂として、民間工事のの3~4倍の値段で買っている。同じように県内各地で採石場を持つ業者たちから、『なぜ琉球セメントばかりにボロ儲けさせているのか!』と、苦情が殺到しているはずだ」という。辺野古へ運ばせないために、各地域で監視を続けなければならない。

  
 

2020年11月10日リンクURL