「胸触ってもいい?」「抱きしめてもいい?」
財務省幹部から、テレビ朝日の
女性記者が言われたことばだ。
この記者と、自分を重ね合わせた女性たちがいた。
他人のセクハラを取材してきた
「私たち」こそが、当事者だった!
もう黙ることはしない―。
決意の白書、社会時評、
そして主要メディアのセクハラ対策調査を、
これからペンを持とうとする女性たちへ送りたい。
この本「マスコミ・セクハラ白書」:WⅰMN編著 の表紙裏に記された言葉である。
伊藤詩織さんの例が特別なものではなく、いまだに少数派であるメディアで働く女性たちが、取材先で出会う性暴力、性差別、パワハラがいかに日常的なものかが、この本によって改めて浮き彫りになった。
身体を触られる、セクハラ発言、差別扱い、パワハラは日常茶飯事、取材で会った政治家や、県庁幹部、警察幹部からレイプされた女性記者たちの証言。同じ女性として憤りなしには読めない。さらに、被害を告発、抗議をすることで、取材ができなくなったり、味方であるはずの職場で担当を外されたり、二重、三重の被害を受ける理不尽に身体が震える。
社会的権力を持つ側の、さらに「男」というだけで身に着けるもう一つの権力のあまりのおぞましさに吐き気を催し、胸が苦しくなったり、お腹が痛くなったりして、何度も読むのを中断しながら、やっと読み終えた。40年近く放送局で働いてきた私も、自分の身に重ね合わせた一人である。
この本は最後にこう呼びかけている。「読者のみなさまへ。もし今、あなたが辛い立場にあるとしても、あなたは一人ではありません。それが本書に込めた私たちのメッセージです」
女性たちの証言だけでなく、コラム(社会時評)や、アンケートによるマスコミ各社のセクハラ防止対策なども掲載されている。これからメディアで働きたいと思っている若い人たちにも、ぜひ読んでもらいたい一冊である。
「WⅰMN (うぃめん)」メディアで働く女性ネットワークは、テレビ局の女性記者に対する財務省幹部のセクシャルハラスメント事件をきっかけに、メディアで働く女性たちの職能集団として2018年春に発足。会員100人超(2019年末現在)。新聞、通信、放送、出版、ネットメディアなどで活動する(フリーランスを含む)女性たちで構成。北海道から沖縄まで、海外在住者も。
ホームページ:http://wimnjapan.net