この本を読むとあなたは水道水が飲めなくなるかもしれない! ~ 永遠の化学物質 PFAS汚染

 80年前に発明されて以来、有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)は、私たちの暮らしのあらゆる側面で使われている。焦げつかないフライパン、電気炊飯器の内ガマ、脂っこい食べ物を包む包装紙、撥水加工の傘や衣類、化粧品、携帯やパソコンのタッチスクリーン、軍民問わずすべての空港で使われている泡消火剤etc…。

 そして、これらが使われ、廃棄されることで、土壌、河川、海、空気が汚染され、農作物、魚など海産物、水道水を通して私たちの身体に入ってくる。

 本書によれば、 いったん人体に入ってしまうと排出が難しく、胎盤を通して胎児に、母乳から赤ちゃんへとどんどん蓄積、濃縮されていく性質を持ち、癌をはじめ様々な健康被害をもたらす。特に発達途上にある子どもの身体への影響が著しい。自然界での半減期は1000年といわれ、完全に分解されるには数千年を要する、それが永遠の化学物質と言われゆえんである。

 米国をはじめ諸外国では、その毒性がよく知られ、米では公文書に「有毒で、どこにでもあり、永遠に亡くならない」と記されている。2000年にアメリカで明るみに出た大規模な被害をきっかけに、国際条約で一部が製造、取引禁止になった。だが日本では一般国民にはほとんど知らされることなく、いまも暮らしの様々な場面で使われている。

 多摩川、淀川をはじめ全国の河川・地下水が汚染され、日本は母乳からの検出は世界的に突出している特に米軍基地が集中する沖縄は、全国一の汚染地域になっている。

<米軍普天間飛行場から流れ出した泡消火剤で汚染された民間地域の河川 20年4月>

 <泡消火剤の基地外流出で、住宅地に飛び散る泡。20年4月)>

 普天間基地や嘉手納基地からの泡消火剤の流出は火災消火だけでなく訓練や火災警報器の誤作動による流出、意図的な廃棄などにおける流出が何度も起っており、そのたびに基地周辺の河川の汚染され、国基準の40倍以上の数値が検出されている。16年には那覇、中部7市町村45万人に水を供給している北谷浄水場の汚染が明らかになった。

 命にかかわる問題なのに、国や国民の関心は薄い。2016年の流出事故をきっかけに沖縄県知事からの度重なる要請で、国はやっと水道水に含まれるPFAS、PFOAの基準値を設定したが、世界水準が0.1~1ppmであるのに対し、日本は50ppmと高く、「それでは国民の健康は守れない」と専門家は口をそろえて警告している。

 日本政府の重い腰を上げさせるためにも、多くの国民に有機フッ素化合物PFOS、PFASの恐ろしさを知ってもらう必要がある。

 今年4月の普天間基地からの泡消火剤の大量流出事故(コロナ自粛中の米兵が、格納庫内でバーベキューを行い、火災警報器が誤作動、泡消火剤が噴出した。しかし、米兵らは誰も警報器を止める方法を知らず、消火剤が全部なくなるまで流出し続けた)の後、緊急出版された本書は、3人の研究者が執筆、PFASに代表される有機フッ素化合物のおそろしさと汚染の実態を知る最もわかりやすい手引書となるでしょう。

岩波ブックレット№.1030 「永遠の化学物質  水のPFAS汚染」定価620円+税 

 

 

2020年9月21日リンクURL