沖縄的こころ ②~シーブン(おまけ)

県外から友人知人が沖縄へやって来ると
私は、必ず那覇の市場へ案内することにしています。
なぜなら、市場は庶民の暮らしと文化が、良くも悪くもよく見えるところだからです。

那覇市場

那覇市場

しかし、中には私よりも沖縄のことをよく知っている 沖縄通の友人もたくさんいます。
先日も、高知からの友人と市場へ行きました。
もう二十数年、沖縄へ通い続けている人です。

彼女は、沖縄中どこにおいしいお店があるか、珍しいものがあるか、
楽しいところがあるかを知り尽くしています。

那覇市場には、彼女が常連として買い物をしている店舗がいくつかありました。
沖縄へ来ると必ず寄るところがあると、逆に私が案内されていったのは
お肉売り場でした。

 

肉売り場~ブログの内容とは関係ありません

肉売り場~ブログの内容とは関係ありません

彼女は、箱いっぱいの買い物をして郵送を頼んでいました。
沖縄在来豚・アグー(黒豚)のハムやベーコン、塩漬けなどです。
沖縄に来た時だけでなく、高知から電話一本でいつでも送ってくれるこの店の常連さんだったのです。

そして彼女は、私のことを
「この人は、観光の人たちをよく市場に案内しているので
知り合いになっているといいですよ」と、私のことをお店のオーナーに紹介してくれました。

これは?なんでしょう!

これは?なんでしょう!

私、お魚党なので、お肉は、出された料理はおいしくいただきますが, 自分自身でお肉を買って調理することはめったにありません。
が、紹介された手前、何も買わずに帰るわけもいかず
アグーのソーセージと瓶詰のアンダンスー(肉みそ・沖縄伝統の保存食)を買いました。
合わせて800円くらいの買い物です。

でも、手渡され品物があまりに大きな包みなので
?という顔をしていたら、「シーブン(おまけ)入れておきました!」とのこと。

家へ帰って、びっくり!!!
入っていたオマケは、大きな塊のアグーベーコンでした。
私が買った品物の3倍くらいの値段です。

買ったのはこの二つ

買ったのはこの二つ

オマケにもらったベーコン

オマケにもらったベーコン

 

 

 

 

 

 

かっては(二昔前くらまで)、このような場面はよくありました。
糸満の市場で、やはり東京からの友人たちを案内していたとき
市場のアンマー(お母さん)たちに、いろいろと質問して、
糸満女性のことを教えてもらったあと、3個のみかんを買ったところ、
アツアツの揚げかまぼこ(7センチ×20センチほど)をもらったことがあります。
これも、かまぼこのほうが何倍も高いのです。

意気に感じたら採算は度外視、これが沖縄アンマーの心意気なのです。

その伝統が、那覇市場でまだ生きていたことに
私は、改めて感動したものです。

カラフルな魚売り場

カラフルな魚売り場

2013年7月5日リンクURL

沖縄的こころ~おもてなし

先日、高知から5・15の平和行進に参加するため30年来の友人が
沖縄を訪れたので、琉球料理の居酒屋で夕食をした。
その居酒屋での出来事である。

居酒屋に似つかわしくないあどけなさ

居酒屋に似つかわしくないあどけなさ

私たちが食事をしていると、
中学生と思われる男子生徒6人が賑やかに入ってきて
私たちの右隣の席についた。

「居酒屋に中学生?」
泡盛の居酒屋に幼児や小学生を含む家族連れが来るのは
さして珍しくない夜型社会の沖縄ではあるが

さすがに中学生だけのグループに
店内の客の目線が一斉に彼らへ注がれた。
沖縄の子どもたちではない様子。

私の連れが「どこから来たの?中学生?」と尋ねた。
「徳島から修学旅行、中学2年生」とのこと。

最近の修学旅行は、大型バスでの一斉行動ではなく
5~6人の少人数で、出来るだけ地元の人たちと触れ合うことを目標に
生徒自らが計画を立てて行動するのが主流になっている。

きっと「沖縄の料理を食べよう」と考えたに違いない。
その店は、泡盛居酒屋としては県内でも1~2の老舗なので
ネットなどで調べて来たのでしょう。

見ていると、まずソーメンチャンプルーが運ばれてきた。
しかし、6人で一皿である。
当然ながら、一人一口にもならない。
奪い合うように一つの皿にみんなの箸が集中し
3~4秒で皿は空っぽになった。

続いてゴーヤーチャンプルーが運ばれてきた。
やっぱり一皿である。同じ場面が展開した。
彼らの夕食の予算では、一皿が限界だったのでしょう。

私と友人は目を見合わせた。
考えていることが同じだったようだ。
彼らのために、もう一皿ずつ頼むことにした。
私の友人は、同じ四国ということもあって、母性がくすぐられたのかもしれない。

そのときである。
私たちの左隣にいた7~8名のグループの中から
50~60代の男性が立ってきて、大きな声で中学生たちにいろいろ質問をし
メニューの沖縄料理について解説を加えた。

おじさん登場!(柱の影)

おじさん登場!(柱の影)

5分も経たずに、中学生のテーブルにソーメンチャンプルー二皿が運ばれてきた。
目を白黒させている彼らに、店の人は「あのおじさんからのおごり!」と言った。
照れたような顔で、お礼もそこそこに彼らはすぐに料理に飛びついた。

ソーメンチャンプルーのお皿が空になる頃、今度は、ゴーヤーチャンプルーが二皿、ゆし豆腐の吸い物人数分。
さらに、もずくの天ぷらと麩チャンプルー二皿が運ばれて来ると、
同じグループの年配の女性が「それは私のおごり」と手を挙げた。

旧知の店のオーナーが私たちのところへやってきて
「あれで充分だと思うので、お二人の注文は取り消しましょうね」と
言いに来た。

私と友人は
「彼らの一生のよい思い出になるといいね」と話し合った。

沖縄も観光地化がすすみ、競争が激しくなって、世知辛い話が多い中、
久々に、古き良き沖縄のこころを目の当たりにして
友人と二人、ほろ酔い加減も気持ちよく、沖縄の夜を過ごすことが出来て、うれしかった。

おじさんと店主と記念撮影

おじさんと店主と記念撮影

2013年6月1日リンクURL

黄金言葉 くがにくとぅば(ことわざ)

沖縄では、「ことわざ」のことを「黄金言葉(くがにくとぅば)」といいます。

テッポウユリ

テッポウユリ

97歳の天寿を全うした我が祖母は(生きていたら111歳)
孫である私を叱ったり、諭したり、または褒めたりするとき、
よく黄金言葉を使いました。

「ユクシムニーやジョウ(門)までん通らん」
⇒「嘘は門を出るまでにはバレてしまうよ」とか

「ヤー(家)慣れーや外慣れー」⇒「家でのいつもの癖が外でも出てしまう」
つまり、「家ではだらしなくしていても、外ではちゃんとするから」なんて言い訳は通用しないよと、よく叱られたものです。

マキバブラシ~渡嘉敷にて

マキバブラシ~渡嘉敷にて

教えて貰った黄金言葉はたくさんありますが、中でも
私が好きなのは「チュイ タレイ ダレイ(一人 足れい足れい)」です。

どんな人も一人で「完全・完璧」とはいきません。
相手の欠点を責めるのではなく、それとなくカバーしてあげる。
自分の足りないところは、教えてもらう。
つまり、「お互いに足りないところを補い合う」という人間関係です。

 

また「みんながそれぞれ得意なことを持ち寄り、発揮して
何か一つのことをやり遂げる」、そんなときにも使われます。

かつては、それこそ近所同士で味噌・醤油まで貸し借りしたものです。
物心両面、足りないところをお互いに補い合うという
ここにも根底に「ゆいまーるの精神」が生きています。

野ボタン

野ボタン

祖母が語る黄金言葉は、子どものときは理解できなくても
大人になって、人生の大事な場面で
「あぁ、あれは、そういうことだったのか!」と
胸に落ちることがなんどもありました。
まさに黄金言葉です。

どこかでこれらの言葉に出会うたび
いつも私を抱いて眠ってくれた祖母のふくよかな胸の感触と ぬくもりをふくふくと思い出す今日この頃です。

2013年5月22日リンクURL