野山に春の実り ~ 渡嘉敷島

 陽光に照らされて、渡嘉敷島の野山はいま豊かな実りの季節を迎えています。写真を見るだけでもワクワクし、豊かな気分になる春の便りです。

 <3月15日 琉球新報 ↑>

 渡嘉敷島で過ごした子どもの頃、大人たちが野良仕事から帰ってくるのを、今か今かと待ちかねていたものです。お目当ては「やまむむ、野イチゴ、くーび、なんでんしー、ぎーま…」など、季節によって木の実は違っていたけれど、母や祖母が家で待っている子どもたちへのお土産にと、野山に実る自然の恵みを手折ってくるからです。(ケーキやアイスクリーム、果物などいくらでも美味しいおやつが食べられる今の子どもたちは見向きもしませんが…)

 それはいつも、頭に乗せたバーキ(ざる)いっぱいに収穫した作物(芋や大根、人参など)の間に一枝か二枝、まるでかんざしでも飾るかのように挿して、帰ってくるのです。その姿を見つけたときの、うきうきした気持ちと幸せ感と共に、子どもの頃の自分が、鮮やかな映像となって蘇ります。

バライチゴ

バライチゴの花

野いちご狩り2013年

これは大人になってから教えてもらったことですが、ある日、畑からの帰り道、まだ青い実がつき始めたばかりのヤマモモの木を見つけた祖母が、その一枝に目立つ色の紐(何色だったかは忘れてしまいましたが)をリボン状に括り付けたのです。「それ何?」と聞くと「この枝は私が予約しましたよ」という意味なのだそうです。そうすれば、この枝には誰も手をつけない、村人の間の暗黙の了解だったようです。

 こういうのって、いいなぁ~!しかも、一本の木全部ではなく、”一枝”というのがまたいいですよね。古き良き時代のお話です。

 

2020年3月16日リンクURL