私たちが「ベトナム戦争証跡博物館」を訪れたとき、ベトナムの民族衣装アオザイの特別展が行われていた。
民族衣装と戦争・平和がどう結び付くのか訝しがっていると、
沖縄にもいらしたことがあり、そのときお会いしたことがご縁(当時は副館長)で、
館長・フィン・ゴック・ヴァンさんが、私たちを特別に直接案内、解説してくださった。
日本のきものと並んで、女性を美しく見せる民族衣装と言われるアオザイ。
きもの同様日常的にはあまり着られることがなくなり、
結婚式や特別な行事での着用で、やっと細々伝統が維持されているとのこと。
アオザイの魅力を何とか若い人たちに分かってもらいたいと、
この特別展を企画したという。
この特別展では、ベトナム戦争でアオザイがどんな役割を果たしたかが語られていた。
ベトナム戦争では、兵士だけでなく多くの人民、女性たちも戦わざるを得なかった。英雄と呼ばれる女性を何人も生み出している。長く過酷な戦争の中で、彼女たちが心のよりどころにしたのが、民族的象徴・アオザイだった。
特別展では国民的英雄となった女性たちの活躍ぶりを紹介し、実際に彼女たちが着ていたアオザイが展示されていた。
後に英雄として讃えられた女性、そして彼女が来ていたアオザイ。
若い女性たちも、戦った。その団結の印が白いアオザイだった。
本来、平和の象徴であるべき美しい民族衣装・アオザイが、戦争のユニフォームになったという話。強いられた戦争を、正義と生き延びるために戦ったベトナムの人々の苦難を、辺野古の闘いに重ね合わせて複雑な気持ちで聞いた。