このところ、買ってまだ2年ほどの腕時計が
よく狂うので困っている。
狂いが大きいときは一日に2~3時間(どうもときどき眠っているらしい)、小さいときは5分程度。毎朝テレビのタイマーにあわせてから出かけているが、これではほぼ時計としての用をなさないと言ってもいい。
そんな折、行きつけの美容室で、面白いタイトルの本に遭遇。
そのなかに、いまの私にぴったりの項目を見つけて、思わずニヤッとしてしまった。
「村上さん」とは、あの世界的なベストセラー作家村上春樹氏のことだ。
彼のホームページに「どんな質問にも答えます」というので
メールで質問をすると、必ず答えが返ってくる「なんでも相談室」というコーナーがあるらしい。(いまもあるかどうかはわからない。かなり古そうな本だった)
その質疑応答の一部が本になったのが「そうだ、村上さんに聞いてみよう」(朝日新聞社刊)である。
実に硬軟さまざまな質問がある。
「カラオケには行きますか?」というものから、「ベランダに裸の女性が出てきたら、どうする?」とか「なぜナプキンというのか?」などなど。
それらの質問に、村上さんは、ときには真面目に、ときには冗談でごまかして、ときには「知っていても言いません」と、粋に楽しく答えている。
どの答えも傑作だけど、私をニャッとさせたのは20歳の大学生のこんな質問。
「家には、部屋ごとにいくつもの時計があるが
どういうわけか、家中のどの時計もいつも狂っている。何度合わせても狂うので、今ではもう放ってある。なぜ我が家の時計はこんなにも狂うのか?村上さんもこんな経験ありますか?」
村上さんの答えが楽しい。
『こんにちは。何でも相談室の村上です。
僕は、あなたのご一家は時計につけ込まれているのだと思います。機械というものはけっこう人の顔を見て態度を決めるものです。一度、すべての時計を一か所に集めて、こんこんと説教してやるといいと思います。「このままじゃ、ただではすまさないぞ!」と、きっぱりとした口調で(笑ったりしたらいけません)言い聞かせると、割と簡単に改心します。やってみてください。やるのは月初めか、月末がいいようです』
この質問者が、村上さんの回答の通り実践したかどうかは知りません。
が、私はやりましたよ。
時計を握った手を胸にあて、こんこんと諭した。「あなたの本来の役割は正確に時を刻むことだ。なのに今の状況はどうしたことだ。このままではあなたを捨てなければならない。どうかちゃんと自分の仕事をしてくれ!」と。
その結果ですか?
想像にお任せします。