兼好法師の「徒然草」に
友だちとしてふさわしくない人として
七つの「悪き者」が挙げられている。
その三つめに「病なく身強き人」とある。
つまり「健康な人」は、友だちにするには良くない、と言うのである。
高校の古典の授業でこの文章に出くわしたとき
随分戸惑った。
私は、すこぶる健康体で
定年するまで40年間、一度も病気で休んだことがないと
このブログにも書いたが
実は高校卒業のときにも
小、中、高校12年間、無遅刻、無欠席で表彰されたことがある。
子どもとしては、病気をしないことが
自慢ではあっても、「悪き者」とされるとは
思いもよらなかったのだ。
兼行法師が、健康な人はいい友だちになれないと言ったのは
「病気をした経験がないので、病人の気持ちが解らない」というのが
理由である。
確かにもっともだと思い、乙女心は悩んだ。
と、いうのは転校が多かったせいもあり、
当時(高校2年生)私には、本当に親友といえる友だちがいなかったからである。
「きっと、人の痛みを知らない、鼻持ちならない人間だったかも知れない」と
反省した。
だからといって
病気には、なろうと思ってなれるものではない。
一生懸命に想像力を働かせて、推し量ってみるしかないのだ。
しかし、所詮私は私、人の身になるには限界があった。
以来、健康であることが引け目になった。
障がいのある人を避けたり、必要以上に親切にしたり。
これは、若きころの苦い思い出だが、
それはいまも尾を引いているかも知れない。
人一倍、健康に関することに興味があるのは
そのせいであろう、と自己分析している。