講演会「安田純平 戦地取材を語る」~ 戦争を していないふりをする日本

 内戦下のシリアで、反政府武装勢力に3年4か月にわたって拘束されたジャーナリストの安田純平さんの講演会(主催:沖縄平和サポート)が、5日那覇市の教育福祉会館で行われ、戦地取材の必要性や、拘束されたいきさつ、日本政府の対応などの実情を語った。

 安田さんは「私は人質として拘束されたのではない。取材では入れなかったので、労働者として入国したため、スパイ容疑をかけられ拘束された。しかし、日本のメディアが初めに”人質”と安易に報道したことで、デマがデマを呼びネットで広がって本当に人質にされてしまった。武装勢力からは私の家族にも日本政府にも、お金の要求は一切なかった」

 戦地取材については「大手マスコミ(企業)に所属するジャーナリストは戦闘地域には行けない。空爆下で危険にさらされている人々の暮らしや苦悩など、フリーのジャーナリストたちが命をかけて取材をしているから、戦地の本当の姿(実態)が世界に伝えられている」

 自己責任というバッシングにさらされた安田さん「自己責任という言葉は、政府が自らの免罪のために言いはじめた。自己責任といいながら、じゃ”勝手にしろ”というのかとというとそうではない。解放後パスポートを取り上げられた。つまり、行くな!ということ。私に自己責任で選ぶ権利はない。政府が認める範囲で許すということであり、自己責任の取りようがない」

 また「ネット上で、自己責任で勝手に戦地に行ったのに、政府がお金を払い解放された(国に救われた)とデマが広がった。私の開放に政府は一切関与していない。私の解放のために武装勢力と無償解放の交渉をしてくれた支援団体が、家族への連絡を頼んでも政府は一切無視した。政府が私に接触してきたのは解放後である。

 このように日本政府が私の解放のために身代金を払ったというデマが広がることで、『日本は人質に金を払う国』とされ、日本人が人質にされる危険が大きくなっている。

 講演会は前段で、沖縄タイムスの阿部岳記者が「メディアの現状と沖縄の平和運動」と題して講演、安田さんの講演の後に、山城博治さんも加わってパネルディスカッションが行われた。

 講演会には350人が駆け付けた。用意した席に収まらず、会場の前、後ろ、横にも目いっぱい詰めて座り込み安田さんの話に耳を傾けた

 

 

 

 

 

 

 

上記のほかに印象に残った安田さんのことば>

「テロリストと呼ばれる人たちは、もともとそこに暮らしていた普通の人々。サダム政権に抵抗するレジスタンスだった。イラクの内戦に大量破壊兵器を理由アメリカが介入してイラク戦争が始まったとき、レジスタンスというとアメリカが悪者になるので、テロ戦争と呼んだ。テロリストとは便利な言葉。わかりやすいから」

「イラク戦争には日本も加担した。安保法を成立させてアメリカの”後方支援”と称したが、後方支援は立派な戦争。後方支援がなければ戦争は遂行できないからだ。日本が戦争をしていないふりをしても、国際的には誰も信じない

「警察を信用しているのは日本だけ。一番信用できないのは警察」

「自分が自由であるために、他の人の自由も認める」

 極端に自由を束縛された長期の拘束に、最後のころには「助けると思って殺してくれ!」と懇願するほど精神的にも身体的にも追い詰められた安田さん、「好きなことができるときに、好きなことをやってください!」と、講演を締めくくった。

 

2019年10月7日リンクURL